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「仁王君何してるんですか?」
「おまんの顔見ちょるんよ。綺麗やねぇ」
「それはどうも。…「同じ顔」でしょうが」
なにもこんな所で言い出さなくても、
と柳生は呆れ声で応えた。
何気なく発した質問の不用意さに自分の頭脳を軽く疑う。こんなに単純な構造ではなかったはずだという自負がある。
夕暮れとは言いがたい埠頭の道、群青ではなく金に染まりきってもいない波を目にしながら、ふと隣のチームメイトが自分と同じものを見ていないことに気付いて声を掛けた。
予想などしなくとも分かりきった答えだろうに、うっかり聞いた自分が情けない。
案の定ニヤニヤと会心の笑みを浮かべるチームメイトに、しかし開き直って皮肉を付けるぐらいの余裕はあった。
「のぉ、綺麗な海見ちょると、飛び込んでみとぉならん?」
付けた皮肉に『それは俺もかっこえぇ言うこと?』と嘯き、柳生の目線と入れ替わって波を見やる仁王。
「そうですね…しかしそんな風にはしゃぐ年ではないですが」
「………おまんは幾つじゃ…倍はいけると思うぜよ;;」
「倍でもあなたなら出来ますよ」
「そしたらおまんもじゃろ」
したり顔で笑う白髪にも波が映って、もう飛び込んだあとのようではないかと柳生は目を細める。仁王の白髪に反射する波間の光が眩い。
綺麗な波。
飛び込みたいと言うより吸い寄せられる眩しさを感じるけれど、とその髪を眺めていれば、
「…柳生、飛び込んで良か?…ちゅうか飛び込む」
「え?」
しまった。またやってしまった。
たった今、自分の不用意さに頭を抱えたばかりではないか。
「仁王くん…」
「温(ぬく)か海じゃ」
温かいのはあなたです、
とまた声に出さず言葉を返してみる。
一旦試合となると怜悧で狡猾なプレイヤーだけれど、コートのラインを出てしまえば、駆血帯を外した瞬間のように血が走りだす彼。
「仁王くん…」
そんな声音に聞こえたのか、柳生の呟きに仁王は慌てて、しかし離れがたそうに腕に空間を入れた。
「…す、すまんの…」
思いのほか素直なパートナーに柳生は
彼も大分自分の言うことを尊重するようになってきたな…
と思って、そんな仁王の変化に笑った。
けれど仁王にしてみれば、ただでさえ離れがたい相手に艶やかな微笑みを見せられて、勘弁してくれと冷や汗をかく始末。
そんな仁王を意地悪くもこっそり堪能してから、柳生は彼の後ろを指差した。
「向こうをご覧なさい」
「ん?…おぉ、フェリーぜよ!あれはでっかいのぉ」
「ねぇ?ここは皆が旅の終わりと別れを惜しみ、再会と門出を祝福する場所でしょう。だから少しだけ、私たちがこうしていても大丈夫ですよ」
にっこりと微笑って、仁王の肩に両腕を乗せる柳生。
――皆、自分の変装を底無しと言い、変装に合わせるテンションの変わりように目を見張っているけれど、そのダシにした男の方が何枚も上手だったということを言ってやりたいような言わないでおきたいような、むずむずした感覚が軽い重さを感じる両肩に蠢いた。
この男の躾に無意識に従って離しかけた手だというのに、これではまるで
(入れ替わっちょるぜよ…)
遠慮もためらいもなく頬に寄せられる栗色の髪に、仁王は謎解きを放棄した。どうせ結局は自分が仕掛けたことの結果なのだ。
さらさらと風に遊ぶ髪に指を通す。
頭と背中を引き寄せられて、柳生は居心地悪そうに瞼を伏せた。
人影は見えなくともこんな往来で、最初は彼の軽口にすら眉をひそめたと言うのに…自分が仕掛けた状況なのは分かっているが、やはり自分は彼にはなりきれないのだなと思う。
「…仁王くん、あの……仁」
「うん、そろそろ帰るぜよ」
柳生の思考をなぞろうと思えば、それは時に至極簡単な事で、今の彼は非常に読みやすかった。
今度こそ体を離してラケバを背負い直す。
肩口のブレザーに乱された栗色の髪をさらりと撫でると、愛しい相棒の口元がふわりと微かな弧を描いたのは本人は知らないだろう。その眼が引き寄せられるように仁王の指先を追っていたことすら気付いていないだろうから。
踵(きびす)を返して先に立った。
「行こか」
「はい」
すぐに綺麗な足音が続く。
半歩後ろまで追い付いてきたところで、その右手を掬った。
「!仁王君!」
瞬間、体を強張らせ手を引こうとする予想通り過ぎる反応に、仁王は嗤う。
首筋まで真っ赤に染めてたじろぐ柳生の右手を、絡め取る。
困惑の表情でこちらを伺ってくる相手に笑ってみせた。
「行こ?」
「……はい」
繋いだ手を隠すように腕と体を寄せてくるのは余計目立つのではないだろうかといつも思うが、もちろんそんなことは言ってやらない。
左腕で、肩で感じる温かさに仁王は歩を早めた。
ぴったりと横に並ぶ柳生は、耳を染めて黙ったまま。。
to be continue…
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久し振りすぎるSSうpごめんちゃいー!!!です!!!
しかも28ね!
オマエ四天サークルじゃないのかよっていうね!!
しかも続くっていう…ね…!!
続け…たいなァ…www
もうね、2年ぐらいちまちまちまちま書いてたんですよ…ケータイの未送信が積もり積もって(=u=;)
テニミュのたびに282爆発して書き進めてきましたwww
他にも積もり積もったSS仕上げたい…前に、スパークの原稿やりますww
ではアデュー!!
この記事に対するコメント
コメント来てますメールが届かないよじゅげむ!!
おかげでレスが今になったよすんませんっしたうさぎ様!!!!地球の向こう側まで土下座だよ!!!
たまらんありがとうございます!!!
押すか引くか伺ってるのは私です←
これ以上書こうかどうしようか伺ってるただの小心者ですwww
でも頑張る!!
うさぎさんはいつも優しく待っててくれるので頑張ります!!!
ベタベタしすぎずお互い好きあってるのに押すか引くかうかがってる感じたまらんです><
続きお待ちしてます…!