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偉いやろ?
いやいやちゃうわ、エライ事やねん。
「財前君、ちょぉ時間あるかな?」
きっかけは数日前の午後練のあと。
どやどや部室を引き揚げて門をぐぐったら、そこにいた2年の女子。
呼び止められてちゃんと立ち止まり、
「何、鈴木も中村も二人して」
相手の名前を言った事から2人組の女子が財前と同じクラスやと知れる。
コレで意外と同学年には普通の対応なんや。このツンデレのデレが欠けた男は。
「あんな…ちょぉ場所変えたいねんけど…」
俺らの方をチラ見して落ち着かない女子の目的が何なのか分かって、ここはひとまず囃し立てとかなな!とユウジと目を合わせたら白石に先を越されて
「えぇよ、俺らが先行くさかい。財前、合流せんでええからまた明日朝練でな」
さわやかに気を回す白石の笑顔にホッとした顔になる女子2人。
つまらんわ〜・と言い合いながら歩きかけた俺らの背に、財前の声が刺さった。
同学年の前では出さへん他学年相手の『いつもの』声に近くて、俺らも女子もちょい驚いたのを覚えとる。
「構しまへん先輩。すぐ済みますからそこで待っとって下さい」
えっ・と顔を赤くした女子に向き直り、声を戻して用件を話すように促す。
「悪いな、何の話?」
一歩前にいた女子が友達につつかれた。
「あ、えっとね……あーあたしな、あの、財前君の事、ッす、好きやねん!…あたしと付き合うてください!」
まるでマンガのように真っ赤になって告白する女子を見て、ついついニヤリ笑いが出てまう。
ここぞとばかりにからかってやろうとまたユウジと目配せしたら、こんなギャラリーの中で告った女の子をなんだと思ってるの!と小春にゲンコツを食らった。
「そうか。ありがとう」
財前のありがとうなんて、親しか聞いたことがないんやないやろか。
あまりの衝撃に俺らは白石から師範まで揃って目を丸くし、告った女子はものすごい笑顔になった。
「好き言うてくれるんは嬉しいけどな、俺今テニス関係しか考えられへんねん。悪いけど、お前とは付き合えん。堪忍な」
………デレツン!!??
新しいわ〜!!とまたまたユウジに目をやったら、今度は全員と目が合った。
「財ぜ〜ん、自分ええんか〜?あないえぇ子振って〜」
「せやせや!自分みたいなドS好きになってくれよる貴重な子やで〜!」
「うっさいッス先輩ら」
財前を間にしてユウジと左右から肩を組んで絡み歩く。
クソ生意気な後輩の色恋現場なんておいしいネタに、食い付かん俺らやないで!
「そうよぉ!あら、それとも光ちゃん、もしかして好きなオンナノコvVおるのかしら〜vV」
どきん。
ん?
「いてませんよ。部活でいっぱいいっぱいッスわ」
はぁ〜〜っと溜め息をついて『うざい』を全面に出すクソ生意気な後輩を、まじまじと見てしもた。
何や今の、
どきん。て
そんで何や、
今、ホッとしてたやろ俺。
「何ですか先輩、ジロジロ見んなや」
冷めた目が、いつも通り俺を見下す。
「やー…ぃや、何でもあらへんし」
ごまかすためにユウジの腕ごと財前の頭を乱暴に抱え込んだら、足元を崩したユウジに思いっ切りはたかれた。
翌日の朝練から、そらもう散々やった。
まったく意図してへんのに目が財前を追っている。軽い話し合いで隣に立たれるとビビる。
「謙也さん」・と呼ばれると心臓に悪い。
ここまでくれば、いくら俺でもそら気付くわ。
あの女子の告白がマンガみたいやなんて笑たけど、俺のほうがよっぽど少女マンガや。
「はぁ〜〜〜…どないしょ…」
「ほんまやで。何日やっとんねん。早よどうにかしてくれや。ビクビクオドオドしてからにこっちまでやりにくくてしゃーないっちゅー話や」
ひとの独り言にひとの口癖を使って駄目押しをしてきよる部長にうらみがましい目を向けるも相手はこっちを見てもいない。
6時間目終りのチャイムが鳴って、俺はずるずると教室から引き摺られた。
白石に連行されるように部室に向かっとると、俺らの前に二つの背中が現れる。
元気に跳ね回る金ちゃんと、面倒そうに隣を歩くのは、…財前。
ぽんっ・と肩を叩かれた。
「何や」
「今日はオサムちゃんやし、自分ら自由行動にしたるわ。ケリつけてこんかい。砕けてなんぼやろ」
「白石…」
人がええんか悪いんか分らん笑顔を見せると
「金ちゃ〜ん!俺と一緒に行こ!」
最強の後輩目掛けて駆け出して行く白石。財前に何か耳打ちし、門をくぐって行った。
門の前に、立ち止まったままの財前。
…コレ、あの時と同じ場所やん……
「何スか、話って」
良い方は違えどコレもあの時と同じセリフ。
それに気付いて、ふと背中が冷たくなった。
怖がっとる・俺。
あの女子の時と、同じ会話になることを。
こいつコレやし、俺ウザがられとる頂点やし、更に男同士やし、部活でいっぱいいっぱい言うてたし、億に…いや兆にイチも可能性なんてあらへんわ・って砕けてなんぼや・て思てたくせに。
そのイチがこないに欲しかったんか俺は。
「ちょ、謙也さん?早よしてくれませんか?」
見上げてくる財前の表情が険しくなる。
この顔が、もっと険しくなってしまうんやな……
「財前、あんな、ま・真面目な話やねんで」
「はぁ」
「本気で聴けや」
「分かりましたから、早よ言うて下さい」
舌打ちをされそうな状況に、担いだテニスバッグを持ち直して呼吸を整える。
「お、お前がな、俺ん事嫌っとるのは分かっとんのやけどな、どうしても言うとかな気ィが静まらへんねん」
俺のアホ丸出しな喋りを、黙って聞いとる財前。あくまでもクールなこいつと反対に、きっと俺は真っ赤になっとると思う。あの子みたいに。
「財前、俺な、自分こと、…好きになってしもたみたいやねん…」
……って、我ながらどんだけヘタレた言い方やと思った。
しまった…!・と頭を抱える。
「…アンタ、どんだけヘタレた告り方してはるんですか」
あ、ゆわれた。
「みたいやねん・言われて、言われた方は困るっしょソレ」
そのとおりです。すんません。
「他に言うことあらへんのですか」
他に言うこと……あん時、あの子は何言うてた?
「……俺と、付き合うてくれんか」
言ってしもうた。砕け散るためのキーワードを。
まともに前が見れへんで、情けないけど下を向いて目線をそらす。
「しゃーないスわ。謙也さんが言うなら、付き合うてあげますわ」
ん?
何やおかしなセリフが聞こえたような気ィがしたで?
おそるおそる顔をあげると、今度は財前の顔が見えへん。
「財…前……くん?」
「アンタなら、付き合うてあげます言うたんです。……俺もアンタが好きやから」
ちょっと、聴力検査行ってきてええですか?
日本一の名医がおる耳鼻科でお願いします。
「……マジで?」
「マジです」
目の前のクソ生意気な後輩をまじまじと見ると、耳が真っ赤に染まっとって。
俺は本気で眩暈がした。
「…か、帰ろか…………………寄り道しながら」
「ッス」
まだ状況がよく飲み込めず、頭は完全にぼーっとしたままやけど、とりあえずまずは一緒に下校かなと思て部室に背を向けてのろのろと歩き出したところで、ふと疑問に気付く。
「せやお前、こないだ2年の女子に部活でいっぱいやから付き合えんて言うてたやろ。あれあの子に嘘言うたんか?…お、俺が告ったんは、その…OKしてくれたっちゅーか…小春にも好きな子いてへんゆうたやろ」
「嘘は言うてませんよ。鈴木には『テニス関係』しか考えられんから『お前とは』付き合えんて言うたんです。小春先輩は好きな女子がおるんかって聞いて来たから、いてませんて答えただけです」
涼しい顔でさらりと言ってのけ、
『テニス関係』と俺を指差す。
そ、そんな言葉の綾みたいな…
「…アンタが早よ気付かんから、あないな事になったんや」
「え?」
「アンタ、無自覚過ぎや」
「……………」
のしかかるように、どん・と腕をどついてきた財前に、自分がもう大分前からこの後輩の事を部活の仲間ゆう以上に気に掛けてた事に気付いた。
スピードスターの二つ名、返上せなあかんかな。
END
………………
謙光も大好きです!!
先輩後輩いいよね
…まぁ、先に載せた光謙とどう違うのかっていわれたら返す言葉もございませんが…m(_ _;)m
つーか更新サボり過ぎてすいませんでした!!
ちょっとテニミュ時期に入ると優先順位が
↑言い訳っちゅー話や…