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「「嫌や!!」」
「あんたらが嫌言うても仕方ないやろ」
「嫌や!絶対嫌や!!」
「幼児みたいなこと言いなや謙也。何やの、もうすぐ中学生なるくせに」
「………」
「ほなお母ちゃ」
「あんたが言うてもあかんからね翔太」
「「………」」
『眼鏡の理由』
「あれ?謙ちゃんは?」
「あぁ〜あのアホね、性懲りもなく拗ねて絶対来ん言うて聞かんから置いてきたんよ」
ほんまガキでどうしようもないわ・
って母親達の会話を聞きながら、ホームに入って来た列車の番号を確認した。
「侑、これ先に運ぼうや。お母ちゃん待っとったら発車してまうわ」
「うん。ほなお姉そっち側持ってや」
直前まで必要やった荷物をまとめたバッグやらトランクやら、ホームに積んだのをお姉と持ち上げる。
「なんでまだこないに荷物あるんやろなぁ、全部送ったはずやのに。ちょっと翔太ぁ!あんたも手伝うて!」
……ほとんどお姉とお母ちゃんのやろ…
万里子姉ちゃん・翔太の母親な?万里子姉ちゃんと一緒に見送りに来た翔太は、少し離れた所に立ったままや。急にお姉に呼ばれて、びくっと体を震わせた。
翔太と二人がかりで荷物棚にボストンバッグを上げる。
ずっと沈んだ顔なんが可哀想で、何や言うてやろうと思って、けどありきたりのセリフしか浮かばんから結局棚を見上げた。
「翔太、そっちそれじゃ落ちるで」
「侑士」
駅で会うた時から母親の後ろを陣取って、まともに顔も上げないこいつの呼ぶ声は、予想通り俺の方に向かへん。
「何や?」
「また転校なんやな」
「せやなぁ、今度は大分遠いけどな」
言いながらふっと、『東京』を感じる。あぁ、ホンマ遠いなぁなんもかんも。
「…転校やったら、またよそに行くこともあるんやろな」
おいおい、まだ行ってへんのに次かいな!いやいやそろそろ落ち着きたいねんけど…
「そうかも知らんし…どうやろなぁ、俺推薦やし、途中で親が引っ越しても残れるようにしてくれるかも知らんしな?」
あのセンセイならやってくれそうやしな。
スカウトに来たときのセンセイと、見せてもろた設備を思い出して軽く血が沸き立った。あそこで、もっと強くなる。
「侑士も引っ越して!」
「え?」
氷帝に飛んどった意識を、割る翔太の叫びに、瞬間引き戻される。
「もし関西転勤なったら、侑士も一緒に帰ってきてや!」
「翔太…」
悲痛な声に慌てて振り向いたら、視線がぶつかった。全然上がらへんかった目が俺を刺すみたいに…
「謙は四天宝寺行くやろ、四天宝寺ってテニス強いやん。侑士ももし転校なったら四天に来たらええやん」
せや。。小学校の最後にここ戻って来れて、俺かてそのつもりやった。おまえと謙也と三人で、華月出たらオモロイやろなとか、もし、事情が、お父ちゃんの転勤だけやったら、、
「そうやのうても…寮とかあるのに…」
「……………」
そう言ってまた顔を伏せたその顔を、目を、ちゃんと見れへんのは自分もやと気付いて鳩尾の上らへんが詰まった。
今まで何度も見てきた表情(カオ)や。こいつらのも、他の色んなところの同級生達のも。
「あ、もしもし麻衣?うんうん、今新幹線!あと10…じゃなぃ、8分で出るよ〜。ね〜久しぶりだよね!遊び行こうね、そうだこないだの渋谷のさぁ…」
イントネーションも流暢に標準語を操るようになったお姉は、転入試験で上京したときに、高校で偶然2コ目の転校先の同級生と再会しとった。
そら、東京行きを誰よりも心待ちにしとるっちゅー話や。
「翔太、もう降りんと。荷物ありがとうな」
「……うん…」
万里子姉ちゃんに挨拶するのに、デッキで嬉々と話し込むお姉の前を通り過ぎて二人でホームに戻ると、出発時刻に気付いたお姉も名残惜しそうに電話を切って降りてきた。
「ごめん!もう出るから一旦切るね、えっうん3時ぐらいに着くよ、改札前ね!ありがと〜♪じゃぁあとでね〜」
…名残惜しいって…今日会える子なんやろ。
今日から毎日。
「顔上げや翔太、元気出し!夏休みには帰って来るし、いつもと同じやん」
そうや、いつもと同じ。
こいつらとこうやって別れるんも、また出会う新しい同級生と別れるんも。
「…東京なんて…俺らには遠いわ。侑士っ」
「!」
あかんことをするようにこっそりと、でも力強く指先を握られて、見上げてくる水分の多い目で、まるでここに縫いとめられた気持ちになる。
「なぁ侑士、今日なんで謙来んかったかわかるよな?」
「………うん」
「来られへんねんあいつ!来たいけど、来られへんねん」
「……うん」
「来たら絶対、行かんとけって言うてまうから、来られへんのや!俺かてめちゃめちゃ迷ったんやで!」
「…うん」
「「侑士っ…」」
「「!」」
ぴったりと重なった声に、翔太と同時に振り返った。
「「謙也…」」
はあはあと息を切らして、来んはずの奴がおった。
発車ベルが鳴り響く。
「侑士…」
膝に手をついて、一歩ふらついた。猛ダッシュで来たんやな。まだ寒空の3月に、顔真っ赤にして汗かいて。呼ぶ声の先は、肺が痛うて続かんかったのか胸が痛うて続けられへんかったのか。
どっちにしろ、ケリつけてやらなならんのは、俺やろ。。
「謙也、ほな行くゎ「侑士!」」
元気に“行ってきます”言うたろうとした声を、謙也が大きく打ち消しよった。
肩で息をしながら謙也は、顔を上げて真っ直ぐ俺を見ると、大きゅう笑ってみせる。
「東京、気張りや!」
大人になったやん(笑)
「謙也…うん、自分もな!」
安心したで?
発車ベルに急かされて、デッキに上がる。
閉まったドアの窓を振り返ると謙也と翔太が仲良う並んどるのが見えた。
翔太が謙也の手をぎゅっと握っとる。
寂しがりやな・と思って目線を上げたら、俺の視線に気付いて翔太は少し口角を結んで顔を横に振った。その目は俺の視線と、まるで一本の棒になったかのようで
「何…」
無言で訴える翔太の顔に促されてみると、
「けん……」
あの笑顔の代わりに、謙也の顔を覆う、涙。
何やねん、転校ぐらいしょっちゅうやないか…
「謙!謙也!!」
思わず、呼んだ。
窓越しで聞こえへんから、声には出さんかった。…のか、出されへんかったのか。
気付いた謙也が唇を震わせても、動き始めた列車にはホームからの声は届かへん。
思わず走り出しそうになった謙也の手を翔太が止める。
あぁ、それであないぎゅっと掴んでたんやな。
こいつらと別れるんは六回目、いろんなとこの仲間と別れたんも六回目。
「そないな顔…もう見てられへんやん…」
七回目の仲間とはもう別れたないけど、こいつらとも一緒におりたい。
「ここに…居りたい…っ」
両目を真っ赤に腫らした二人が、どんどん小さくなってく。
こないな日をあと何回繰り返すんやろかと思ったら、背中が冷たくなった。
「俺がさせとんのやろ、あの顔…もういやや…」
誰のも、嫌や。
とうとうホームも見えんようになって、貼りついとったドアから離れた。
席に戻る気も力も抜けてそのままデッキに座り込む。
「翔太…必死やったな…」
「謙也……あないに泣くの…初めてやん」
窓越しの泣き顔は反射で少しぼやけてて、冷たいガラスが沸き立つ気持ちをクールダウンさせとったけど。
もしこのドアが無かったら、何も考えんと新幹線降りとった。
後先なんて知らん、駆け降りて、抱き締めて、どこにも行かんここにおるって言うて、腫れた目蓋にキスしてやりたい。
「キスは驚くやろな…あのアホ」
その様が目に浮かんで、ちょぉ笑えるやん。
「結局最後まで気付かへんねんもんな〜…」
なんでそないに悲しいんか、まだ分かってへんやろ??
テニスを取った。
翔太の言うたこと、分かっとる。
転勤はれっきとした理由やけど、残りたい言うたら残らせてくれる親やっちゅーのも分かっとる。
謙也の気持ちを、信じとるから。
「ごめんな…謙也…」
もうちょい、甘えさせてや。
もうちょい、強うなるまで。
END
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謙也ハピバ!で小説載せてみた☆けどメイン侑士でスンマソン;;
つかギリギリ3月間に合った~~Σ(=□=;)
謙誕日なのにメイン侑士ってゆー(*v*;)
侑謙話ですが、この時点では
侑←謙なんだけど謙也は気付いてなくて、侑士は気付いてるけど黙ってるって状態です★
ややこしいね…(=u=;)